散歩と料理と小説と俳句と丸々
散歩は、糖尿病と心筋梗塞予後のためにしなくてはならないので、デジカメを持って我が家の近所を歩き回っています。 料理は、奥さんが働いているので夕飯を作ります。 小説は、夢を見続けて、小説家を目指しています。
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小説「白い森の彼方で」*** Chapter 01 白い森と黒い甲冑 ***
『白い森の彼方で』01

佐藤 均


*** Chapter 01 白い森と黒い甲冑 ***

 耐えられない恐怖から逃げ出したくて藻掻(もが)いた。
 逃げ切れないから叫んだ。叫び声が聞こえて、目が覚めた。
 目を開けて、夢だと知った。
 いつもの夜の光景だった。
 黒い外套(がいとう)に身を包んだ見知った男が焚(た)き火をじっと見つめている。
 この男といつからこうして一緒に居るのだろう。
 年月の感覚は無かった。始まりがいつだったのか、思い出すことができない。たった今始まったばかりなのか、それとも。記憶が時々混乱するので、確(かく)としたところはわからないが、男とは長い年月を共に過ごしてきた、気がする。
 確かなことは、こうして男と共にいることに、何の不自然さも感じないということだ。
「不思議な夢を見ていた」
 夢の内容は反芻(はんすう)しても鮮明に思い出せた。
「どんな夢だ。かなり、うなされていた」
「うちに帰ろうと、駅から歩いていた」
「どんなところだ」
 黒い外套の男が訝(いぶか)しげに語調を強くした。耳の奥から黒い音の塊が頭の中に響いた。
 身近に慣れ親しんだはず、と思われた景色が記憶から消えていた。
 説明をできないもどかしさが苛立(いらだ)たしい。
「思い出せない。なぜだ」
「それから」
「真っ黒で、とても大きな獣が襲ってきた」
「食われたのか」
「ああ、すごい痛みだった」
 痛みがまだ残っている身体を見下ろした。
「夢だ。傷一つ無い」
 確かに傷一つ無い。痛みが消えている。
「不思議だ。おまえに話す端から、どんな夢を見ていたのか思い出せなくなる」
「それでいい」
 黒衣の男が口許(くちもと)だけで笑った。
「どんな夢を見ていた」
「暗闇の中に落ちた。後は、覚えていない」
「少し寒いな」
 黒い外套を纏(まと)った男が立ち上がった。
 男は火種だけになっていた焚(た)き火の上に、数本の小枝を無造作(むぞうさ)に置いた。しばらくすると煙が立ち昇(のぼ)り始めて小さな火を点(つ)けた。
 さらに小枝を足(た)して火を大きくし、太めの枝を組んで設(しつら)えた井桁(いげた)の中に、大小の小枝を次々と投げ入れていった。小枝はいつの間にか男の足許(あしもと)にうずたかく積み上がっていた。
 火が高く吹き上がった。熱がはじけて襲(おそ)ってきた。
 思わず手をかざして、放射された熱を遮(さえぎ)った。
「眠らないのか」
「ずっと眠っていた。おまえの悲鳴で目が覚めた」
「すまなかった。そんなにひどくうなされて、いたのか」
「ああ」
 男はしばらく火の加減(かげん)を見ていたが、納得したように黒い外套に身体を包んで横になった。
「これで、朝までもつな」
 男と女は白い森を街道から少し入った円い空き地にいた。空き地はそれ程広くはなく、二人の上に葉を落とした真冬の梢(こずえ)が折り重なっていた。
 焚き火に照らし出された裸の枝は、不規則に絡み合って天井のように被さり、白く、赤く反射して陰影を揺らした。
 梢(こずえ)の上の空は暗いだけで星は見えなかった。丸く膨らんだ焚き火の光の外側には漆黒(しっこく)の闇が広がっている。
 闇の底のそこかしこに、白い木の森は点在していて、それぞれの森の中で焚き火の炎が揺らめいていた。白い木の影が籠(かご)のようにその明かりを包んでいる。
 近いところの大きな焚き火から、遥か遠くの光と見分けがつくものまで、いくつもの光が星空のように煌(きら)めき、見渡す限りの地上に広がっていた。
 見慣れた光景だが、その現象は、この夜も一斉(いっせい)に始まった。
 闇のあちらこちらから、淡く光り輝く真っ白な綿毛のような丸い塊(かたまり)が、ゆっくりと真っ直ぐに空中に立ちのぼった。
 両手で抱えるほどの大きさに膨らんだ柔らかい光は、穏やかに脈動し、身を寄せ合うように空中で寄り添い、虹(にじ)色の光の霞(かすみ)となって空に昇っていった。
「いつ見ても、生命塊(せいめいかい)は美しい」
 毎夜に起こる現象に黒衣の男が初めて触れた。
 女は、見慣れたものに初めて疑問が湧いた。
「あれは生命塊というのか。あれは何だ」
「浄化(じょうか)された生命(いのち)の塊(かたまり)だ」
「浄化された生命(いのち)」
「そうだ」
 ゆらゆらと漆黒の空まで漂い昇(のぼ)って、やがて、闇に溶け込むように消えていった。
 浄化された生命(いのち)はこんなにも美しいものなのか。
 疑問は何もなかった。
 光を空中に放った後、森の焚き火は次々に消えていった。
 火が消えた分、暗闇が広がった。
 静かだった。激しい炎の中で小枝がぱちぱちと爆(は)ぜていた。
 厚手の布に包まれた身体が温まり始めた。
「暗闇に飲み込まれる夢は誰でも見る。心配するな。朝まで間がない。眠っておけ」
 男の柔らかな声が新たな夢の始まりを誘った。


【2008/11/09 06:32】 | 白い森の彼方で | TRACKBACK(0) | COMMENT(0)
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