散歩と料理と小説と俳句と丸々
散歩は、糖尿病と心筋梗塞予後のためにしなくてはならないので、デジカメを持って我が家の近所を歩き回っています。 料理は、奥さんが働いているので夕飯を作ります。 小説は、夢を見続けて、小説家を目指しています。
プロフィール

きんさん

Author:きんさん
いつの日にか、自分の小説を本にしたいと夢見ている幻想世界の住人。



ボタンを押して、投票をお願いします。

blogram投票ボタン



掲示板(Never-Ending)

http://kinsan.8.bbs.fc2.com



リンク

このブログをリンクに追加する



最近のコメント



最近の記事



カテゴリー



カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30



FC2カウンター



FC2オンラインカウンター

現在の閲覧者数:



月別アーカイブ



最近のトラックバック



RSSフィード



ブログ内検索



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QRコード



『白い森の彼方で』*** Chapter 05 二つの波動 ***
『白い森の彼方で』05

佐藤 均


*** Chapter 05 二つの波動 ***

 満天の星空は光の天蓋(てんがい)となり、一つ一つの煌(きら)めきが語り合うように息づいている。
 一際輝きを強くした星々を結んで、語り継がれたたくさんの物語は佳境(かきょう)に入っていた。
 その星空の遥か下、ちょうど雲の浮かぶ高さに淡い光の帯があった。ぼんやりと白んだ帯は風にたなびくようにゆっくりと蛇行しながら流れていた。
 帯は幾筋もあり、暗い地平線の其処彼処から沸き上がり、雲のように漂い、中天に届くと瞬く間に消えた。
 この夜、一筋だけ月明かりを照り返したように強く輝くうすい雲があった。新星にも似た煌めきを中心に包み込み、虹色の輝きを僅かに帯びたそれは、万丈(ばんじょう)に至っても消える事がなかった。
 小さな波動を初めに感じた。ロウはそれで目を覚ました。真夜中だった。
 本震を予想して床の中で彼は身構えた。時を待たずに大波が押し寄せてきた。それは、今までに彼が経験したことがない揺れだった。
 相反する二つの波が相乗し、身体が共鳴して激しく振動した。
 寝床の上で大きく上下に弾んで夜具を飛ばした。部屋が瞬間に掻(か)き消えて、不気味な漆黒の暗闇に包まれた。
 次の瞬間に真っ白な光りが爆発した。怖気(おぞけ)が一瞬に吹き飛び幸福感に満たされた。
 死を覚悟した。それほどの衝撃だった。
 激痛を残してロウの身体を貫いた二つの波動は直ぐに消えた。
 身体は味わったことがないほどの疲労感に冒されている。
 ゆっくりと目を開けると、いつも通りの古めかしさを漂わせた部屋の風景だった。ロウを暖かく包んでいた夜具だけが床に散乱していた。
 まだ鼓動は激しく打っている。荒い息遣いも収まってはいない。意識は朦朧(もうろう)として、身体も痺(しび)れて起き上がれそうにもなかった。
 彼はまた目を閉じた。混乱する思考を立て直しながら、この予兆から何が起きるのかを思い巡らせたが、訝(いぶか)しさだけが残った。
 大惨事が起きる時、重要人物の死、力を備えた者の誕生、それらの予兆を他の誰よりも彼は敏感に感じた。
 悪い時と良い時では、彼を貫く光の色彩や強さが違った。光は温度と明暗の度合を伴ってロウの心と身体を激しく揺さぶった。光の波動のあらゆる情報と長年の経験から彼はかなり精度の高い結論を導き出せた。
 ロウは骨董品めいた木製の外套掛けから白い外衣(がいい)を取って急いで羽織ると外に出た。
 手入れをよくされた庭の端まで潅木(かんぼく)や花壇の間を縫うように歩道が石畳で設えられていた。石畳は円形に広がった展望台で終わっている。展望台の柵の向こうは崖で、闇の先に豁(かつ)然と眼界が開け、宝石の煌めきを広大に敷き詰めた王宮府、アドイが悠(ゆう)然と横たわっていた。
 輝きは都市の中心部に密集している。中心に向かう街道は幾筋もあり、光が帯となって放射状に周辺部に広がっていた。
 逆を辿(たど)れば、周辺部から中心に向かった光の流れは光彩の華やかさを増しながら王宮府に集中し、建物の四方を取り囲み、地上から遥か至高の際まで煌々(こうこう)と翔(かけ)登った。明かりの城壁を纏(まと)った王宮府は不夜城となってアドイの中心にそびえ立っていた。
 周辺部にも所々に光の密集した市街地が点在しているが、そこから先は漆黒の闇で、その闇の広がりは、光に満ち溢れた星空を背景にした、黒々と塗り固められた地平線や山脈の遥か果てまで続いていた。
 手を伸ばせば届きそうな星の煌めきをいっぱいに湛(たた)えた天空をロウはじっと見詰めた。
 夜中のアドイの息遣(いきづか)いが冷たい風のそよぎに運ばれてきた。
 淡く真珠色に光る帯状の雲が浮かんでいる。眼を凝(こ)らさなければ見つけられないほど細くて薄い。夜中のこの時間、曇っていない限り、ロウにはそれが見えた。それはロウの生命力の淵で捉(とら)えられる神秘の現象だった。
 雲は虹色の光を連続して変化させ、生命(いのち)を脈動させていた。脈動は微弱な波動となりロウの生命力の淵に共鳴した。それは喜びであり、幸福感に包まれる至福の時だった。
 絶えず揺れ動く淡い虹色の雲は一脈ごとに様々な色合いの光を天空に飛散させた。あらゆる方向に筋を引いて飛び散った雲の切れ端は夜空に溶け込んで消えて行った。
 消える時に波動は激しく波打った。どこかで誰かが誕生した瞬間だ。
 ロウは彼の特異的な能力でそのことを察知していた。それは先ほどロウを襲った衝撃とは全く別のものだった。柔らかく、穏やかなその波動がロウは好きだった。
 その夜は、満天の星空の中天辺りに、他の雲とは明らかに違う、中心部分を強く輝かせた波動の強い雲があった。
 いつもは楽しんで感じる淡い喜びだが、それとは比較もできないほどの強い感動がロウの胸の内に湧き上がってきた。知らぬまに両頬を涙が流れていた。
「ひとりの人間に死と誕生が同時に訪れることがあるのだろうか。しかも、生命(いのち)の力は桁外れに強い。たぶん、どの王よりも強いだろう」
 先ほど自分を貫いた白く輝く衝撃の安らかな暖かさが、ロウの生命の隅々まで、また広がってきた。
 彼はふと暫く会っていない、いとこのオウリの頭に手を置いた時の温かさを思い出した。




【2008/11/09 06:50】 | 白い森の彼方で | TRACKBACK(0) | COMMENT(0)
↓ランキングにご協力をお願いします。

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバックURL
→http://shitoshi999.blog95.fc2.com/tb.php/103-4fdb8ead